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《研究に関して》 
現在、興味を持ち研究している主な内容を紹介しています。
CURRENT INTERESTS 現在の興味 >> 理論神経科学『計算論的神経科学』と『神経回路網の数理』
 現 在 の 興 味

 

 ―非線形・非平衡系の物理学からネットワークや生命・脳神経系の理論まで―
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理論神経科学
計算論的神経科学神経回路網の数理
『計算論的神経科学 (Theoretical Neuroscience)』
同期・非同期の切り替えとバースト発火(注意のメカニズムとの関連)

 神経系において刺激や行動など状況に依存したニューロン間の同期発火が見つかっています。特に、視覚刺激においては物体の同一性をコードするのに同期発火が用いられている可能性が示され、注目を集めました。これらの同期活動にはしばしばγ周波数帯の比較的高頻度の周期的神経活動が伴ってますが、そのソースについて大脳新皮質ではよくわかっていませんでした。

 しかし近年、γ周波数帯でバースト発火するチャタリングニューロン(Chattering Neuron)が発見され、我々はそのニューロンを新しいタイプのカチオンチャンネルの導入によりモデル化しました。また、その研究過程で、バースト発火 のモード(一周期当たりのスパイク数)がある種の神経修飾物質によりコントロール可能であり、モードの変化に伴い同期・非同期のシャープな転移が見られる ことを発見しました。この研究から、バースト発火の新たな存在意義、すなわち同期・非同期の切り替えに有用な発火様式であることが示されたと言えます。また、神経修飾物質により、バースト発火のモードはたとえ同じ入力がネットワークにある場合でも、同期状態を柔軟にコントロールでき、注意などのメカニズムとして好ましい特性を備えています。抑制性ニューロンのネットワークも考慮して、さらに現在研究を続けています。


抑制性ニューロンのネットワークと電気シナプス結合

 近年、抑制性ニューロンの機能的役割について注目が集まっています。これは例えば同期発火などに重要な役割を果たしている可能性があるのと、特に新皮質において電気シナプス結合が 同種の抑制性ニューロンに存在することが確認され、その機能的意義について関心が高まっているからです。我々は、電気シナプス結合が抑制ニューロンに存在 することで、多様な発火パターンをコントロールすることが可能であることを理論的に示しました。一方、興奮性ニューロン間に電気シナプス結合があっても、 たとえ結合が変化してもほとんど同期傾向以外に安定な発火が実現しないことが判明しました。発火タイミングにより情報を表現する能力を高めるためには、抑 制ニューロン間に電気シナプスがあることが重要であると言えます。


同期発火の機能的役割(理論モデルから示される可能性)

 神経ネットワークには課題遂行中や注意のレベルに応じて同期発火が生じるケースが多く報告されています。上の二つの話題のように同期発火生成のメカニズムは徐々に明らかになりつつありますが、その機能的意味は今なお大きな謎に包まれています。

否定的な意見としては、同期発火は単なる随伴現象であり、積極的な機能的意義はないとの主張をあります。また、たとえ同期発火を生成しても、同期発火を検出 する機構が必要だとの意見も聞かれます。我々は、このような生成された一時的な同期発火が、再び神経ネットワークへ入力として戻っていくとき、どのような 影響があるかとの違った視点で研究を進めています。結果として、同期発火は神経ネットワークの状態を次の状態へスイッチする役割があることが理論モデルにより示されています。現在、そのような事が可能になる学習メカニズムも含めさらに研究を進めています。

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複数の特徴を個別にマップする自己組織化ネットワーク

 視覚情報処理を行うV1において、ある角度の線分に応答する細胞が、角度に関して少なくとも局所的には順番にカラム状に配置されている事はよく知られています。このような刺激の距離基準としてマップを形成するモデルは自己組織化マップ(SOM)として、視覚野のカラム形成のモデルとしてだけでなく、工学などでもデータ解析等で広く用いられています。

 しかし、従来のSOMは Winner-Take-All 型競合を用いるため,一つの細胞が複数の特徴の組合せを表すおばあさん細胞的表現となっている。例えば、楽器の音程と音色をマップすると、形成されるのは 「ピアノのド」や「バイオリンのソ」など、組み合わせをマップする事になります。より好ましいマップとして、例えば楽器のタイプ(バイオリン、ピアノ等) をマップする領野と、音程(ドレミファなど)をマップする領野が自動的に生成されるべきであると考えられます。。我々の新たに提案したモデルでは、より分 散的な表現を自動的に生成するために、複数勝者型競合相互抑制結合を 用いました。その結果、独立特徴ごとの領野形成が可能となり、特徴の組み合わせによる分散表現が自動的に生成することが可能になりました。。また、入力信 号空間の大きさに応じて神経場を分割することができ,さらに特徴数に応じて自動的に複数の領野が形成することができるのは、今までにない柔軟な自己組織化 マップのモデルであると言えます。


Brain Machine Interface
(思考から行動へ、よりダイレクトな機械・脳のインターフェイスの設計)

 もし事故などで手足と共に大脳皮質の運動野が何らかの理由で機能不全になったと仮定しましょう。しかし、手をこのように動かしたいとの「考え」を持つことができる場合、この考えを読みとり動くような人工的な手足があれば、大変助かるはずです。このような「思考」を「行動」につなげるインターフェイスに関する研究が ついに始まりつつあります。まさにSFの世界を彷彿させる話であすが、すでに米国では猿が考える(実際に行動はしない)だけでロボットアームを動かす実験 に成功しています。BMIは社会的にもインパクトのある話題であすが、その派手さの背後に理論モデルから見ても大きな可能性を秘めています。例えば、こち らから同期スパイクなどのある特定の発火パターンとロボットアームの動きを関連付けることで、脳がどのような時空間パターンを学習可能かなどが、いままで 不可能だった操作的な実験が可能になります。今後、BMIのような新しい実験パラダイムが開けるにつれて、神経ネットワークの数理モデルの重要性が増すと 考えられ、現在研究を進めつつあります。

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『神経回路網の数理 (Neural Networks)』
非線形振動子のニューラルネットワークのモデル

  発火のタイミングまで含めた連想記憶モデルとして、位相振動型の素子を持つ ニューラルネットワークのモデルを解析しました。結果として、たとえ発火タイミングに相当する位相に情報を埋め込んでも、その引き込み領域(エラー修正能 力)と記憶容量(情報量など)や想起したパターンの質は低下しないことが判明しました。これは、発火タイミングに情報をコードすることは、生体が採用する 上で妥当なロバスト性を保持している点が示されたと言えます。


結合の破壊などに対するネットワークの耐性

  ニューラルネットの魅力的な点の一つは、分散処理のため多少素子が壊れたとしても 動作自体にそんなに影響が出ないという、ロバストネスがあります。 (もちろん、能力自体は多少劣化はします。しかし、直ちに動作不良になるわけではありません。現在の計算機は一部の部品が壊れた場合致命的な影響がありま す。) そのようなロバスト性を調べるため、記憶容量や結合を切った時の性能の低下の評価 などを理論的に行なっています。意外なことに、位相などのより詳細な部分に情報をコードしても、従来のバイナリのニューラルネットワークに比較して性能低 下はそれほど起こらない事が示されています。


時系列パターンの連想記憶

 与えられた発火パターンの系列を、その発火期間とパターン間の休止期間をパターン毎に独立に学習することが可能なモデルを提唱しました。その基本は、従来よりもより動的な(内部自 由度をもったダイナミクス)素子を用いることでより柔軟な情報処理が可能になるという考えでにあります。

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