「非線形・統計力学とその周辺」セミナーのご案内

第93回「非線形・統計力学とその周辺」セミナーのご案内

日時:平成20年3月21日(金)14時から16時まで

場所:京都大学工学部2号館322室(吉田キャンパス)

講演者: 石崎龍二(福岡県立大学 人間社会学部)

講演題目:
保存力学系におけるカオスの揺らぎの統計性

講演要旨:

以下の3点について講演する.
(1) ブラウン運動から一般化されたランジュバン方程式まで
ブラウンによるブラウン運動の研究,その運動の仕組みを説明するアイシュタインの理論,
ペランの実験,ブラウン粒子の運動を記述するランジュバン方程式などについて概説する.
(2) 保存力学系のカオス解をもつ微分方程式の射影演算子法による解析
運動方程式から一般化されたランジュバン方程式へ変換する森の射影演算子法について解
説する.次に,カオス軌道のランダム化の過程を特徴づけるために,カオス解をもつ微分
方程式から,射影演算子法により系統的に非マルコフな線形確率微分方程式の導出する手
続きについて紹介する.具体的にへノン-ハイレス系について揺動力の時間相関を表す記憶
関数や,振動数に依存したカオス誘導摩擦係数を数値的に求めた結果について報告する.
また,力学変数の2時間相関関数をパワースペクトルのピーク構造から評価した結果につ
いて報告する.
(3) 保存力学系のカオスにおける長時間相関
保存力学系においてカオスが発生する場合の位相空間は,一般に「規則的な運動をする領域
(トーラスの島)」と「不規則的な運動をする領域(カオスの海)」から構成される.保存
力学系におけるカオス軌道は,「カオスの海」と「カオスの海とトーラスの島との境界領域」
とを間欠的に行き来することにより,カオス軌道の軌道不安定性の時間変動には大きな揺ら
ぎが生じる.カオス軌道の局所軌道拡大率の揺らぎの統計性について報告する.
本講演は 文部科学省「21世紀COEプログラム
(動的機能機械システムの数理モデルと設計論
−複雑系の科学による機械工学の新たな展開−)」(京都大学)
の支援を受けています.