第89回「非線形・統計力学とその周辺」セミナーのご案内
日時:平成20年1月11日(金)13時から14時半まで
場所:京都大学工学部総合校舎102講義室(吉田キャンパス)
講演者:大同 ェ明(大阪府立大学大学院 工学研究科 数理工学分野)
講演題目:
振動子集団におけるエイジングの効果
講演要旨:
リミットサイクルやカオスを示す散逸的振動子が多数結合 された系(振動子集団)は、科学や工学の多くの分野に登場する 重要な力学系の一つである。特に生物の生命活動は、心臓の拍動、 胃腸の蠕動、体内時計など、様々な振動子集団が生み出すリズム によって支えられていることはよく知られている。しかしこの ような系は、事故や病気あるいは老化などによる劣化にさらされ ており、時間の経過とともに「健全」な要素振動子の数は減少して いくものと考えられる。また、結合振動子系の工学的応用の観点 にたつと、多かれ少なかれ混入するであろう不良な部品(振動子) の効果を看過することはできないであろう。 本講演では、このような問題意識から、振動子集団におけるエイ ジングの効果を理論的に調べた結果について述べる。ここで、 「エイジング」とは、振動子集団における不良な要素(減衰振動子) の割合が増加することを意味する。特に我々が「エイジング転移」 と呼ぶ一種の臨界現象(H. Daido and K. Nakanishi, PRL 93, 104101(2004); PRE 75, 056206(2007))に焦点をあてる。 本セミナーは以下の集中講義に合わせて開催されるものです. 集中講義:複雑系力学特論II(京大 情報学研究科 複雑系科学専攻 開設科目) 「結合振動子系の動力学とその周辺」 概要: 近年、結合振動子系の研究は世界的に見ても極めて活発に行われ、 成果の全貌を簡単にはとらえ切れぬほどの発展ぶりを示している。 本講義では、講師の視点から、そのような研究の一端を紹介する。 予定内容 1.カオス振動子の結合敏感性 (coupling sensitivity of chaos) 2.振動子集団における引き込み相転移 2−1 大域結合位相振動子系 (1)秩序関数の理論 (2)多分枝引き込みと奇妙な波 2−2 振幅振動子結合系 2−3 実験 3.振動子集団におけるエイジングの効果 3−1 エイジング転移 3−2 エイジングとクラスタリング 4.生物学的時計と群集力学 以上 担当者:大同 ェ明 (大阪府立大学大学院工学研究科教授) スケジュール: 1月10日(木) 10:30−12:00 13:00−14:30 14:45−16:15 1月11日(金) 10:30−12:00 13:00−14:30 研究者を対象に含む講演.講演題目等は冒頭に掲載. 14:45−16:15