「非線形・統計力学とその周辺」セミナーのご案内

第78回「非線形・統計力学とその周辺」セミナーのご案内

日時:平成18年11月27日(月)13:00−14:30

場所:京都大学工学部総合校舎2階213講義室(吉田キャンパス)

講演者:上之 和人 (名古屋大学 工学研究科 計算理工学専攻)

講演題目: つららや鍾乳石の波模様形成メカニズムの普遍性

講演要旨:

屋根雪の融解水で生じる軒先のつららや
鍾乳洞内の鍾乳石の幾何学的形状はよく類似している. 
つららや鍾乳石は, 薄い水膜が表面を流れ落ちることにより成長していく. 
水膜の厚さは非常に薄く約数10μm程度である. 
両者の基本的な成長機構は全く異なる. 
つららの場合は, 水膜を通して潜熱が空気中に放出され氷が成長していく. 
一方, 鍾乳石の場合は, 水膜を通して二酸化炭素が空気中に放出され
炭酸カルシウムが析出することによって成長する. 
成長機構の違いは成長速度の違いとなって現れる. 
つららの場合は, 1時間に約数cm成長するのに対して, 
鍾乳石の場合は, 100年に約数cm成長する. 注目すべき点は, 
両者の成長速度は極端に違うにもかかわらず, 
両者ともその表面上にリングを積み重ねたような
数cmスケールの波模様が発生することである. 
このような波模様形成に関する普遍性はどこから現れるのだろうか. 
このような研究は過去にほとんどなく, 
つららの波模様に関しては、
私によって実験や観察結果を合理的に説明できる理論が提唱された
(PRE2003,PRE2004, 流体力学会誌「ながれ」第25巻 No4,2006 ). 
ここでは, つららや鍾乳石の表面上にできる波模様形成機構を, 
自由表面をもつ薄いシアー流のある水膜からの結晶成長過程における
固液界面の形態不安定性の問題として統一的にとらえてみる.

参考文献
流体力学会誌「ながれ」第25巻 No4, 2006.
http://www.nagare.or.jp/nagare/25-4/25-4.html