「非線形・統計力学とその周辺」セミナーのご案内

第44回「非線形・統計力学とその周辺」セミナー


日時:平成14年9月30日(月) 午後3時から4時30分まで


場所:京都大学工学部総合校舎 2階 213講義室

講演者: 名嘉山 祥也 (京都大学大学院情報学研究科複雑系科学専攻博士後期課程)

講演題目 : 発達した乱流における統計の普遍性と個別性


発達した流体乱流の小さな空間スケールの速度ゆらぎには流れの維持機構、散逸 などの詳細に依らない普遍的な統計則があると信じられている。この普遍統計則 が物理的乱流研究の主要なテーマである。

普遍統計則の端緒は Kolmogorov 1941年の現象論(K41)であり、その後の観測や 実験でK41は乱流の物理過程の概ね正しく捉えていると考えられている。しかし ながら、同時にK41からのずれも見出され、それは乱流の間欠性と呼ばれる。

ところで実験や直接数値計算では十分に発達した乱流場を得ることが難しい。そ のような状況でESS(Extended Self-Similarity)、あるいはGESS(Generalized ESS)の方法といった、普遍統計則を精度よく調べられる方法が発見された。

以上のような背景のもと、乱流の普遍統計則を調べる。噴流乱流の実験データと Navier-Stokes 方程式の直接数値計算によるデータを解析し、方法としての GESSを乱流の法則と考えて、速度ゆらぎ、エネルギー散逸率ゆらぎの統計の普遍 的な側面と流れによる個別的な部分を明確に区別する。さらに、速度ゆらぎとエ ネルギー散逸率ゆらぎの間に成立すると考えられている関係を検証した結果、成 立していないことがわかった。