第43回「非線形・統計力学とその周辺」セミナー
日時:平成14年7月19日(金) 午後3時から4時30分まで
場所:京都大学工学部総合校舎 2階 213講義室
講演者: 大同寛明 (大阪府立大学大学院工学研究科)
講演題目 : 体内時計に支配された生物種の群集力学と時計周期の分布
われわれヒトを含むほとんど全ての生物は体内時計(自律的な生物学的
振動子)を有し、生物の様々な活動はそのような時計によって支配されて
いる。したがって、生物種間の相互作用においても、体内時計の自由度の
果たす役割は小さくはないであろう。本講演では、まず、周期的に変動する
環境のもとで、生物の自然増殖率や種間の相互作用強度が体内時計の自由度
にどのように依存するかについて仮説を提出し、これに関連するいくつかの
実験事実を紹介する。次に、このような仮説にもとづいて、群集力学(
population dynamics )の数学的なモデルを構成し、その性質を数値的かつ
解析的に調べた結果について報告する。体内時計(生物時計)として、最も
重要なものは、周期が約一日の概日時計(circadian clock) であるが、
その周期は生物全体で見ると、実はかなり広い範囲にわたって分布している。
体内時計は外界の周期的変動に適応するために発達してきたはずであるから、
その固有周期と外界の周期である 24 時間とのずれが必ずしも小さくない
ことは、一つの大きな謎である。本研究は、この謎を解くための一つの
手がかりを示唆する。