第34回「非線形力学とその周辺」セミナー
日時:平成12年1月13日(木) 午後1時から
場所 : 京都大学工学部2号館225号室
講演者: 秋山 良 (分子化学研究所)
講演題目 : イオンの周りの水の揺らぎ
溶液中の溶質分子の溶媒和は、現在でも、しばしば連続誘電体と線形応答に
基づいて扱われる。しかし、溶質分子を取り囲む溶媒分子は溶質分子と同程度
のサイズを持っている。この事は、連続体描像が成り立つ状況では無い事を意
味する。また、例えば、電子移動等の化学反応の際の電荷の変化量は、溶媒分
子の各原子が持っている電荷量と同程度であり、そうした溶質の変化から溶媒
が受ける影響は、必ずしも小さくは無い。つまり、線形応答の仮定も必ずしも
成り立っているとは限らないと考えられる。本研究では、イオンの周りの水の
揺らぎを、分子性液体の積分方程式理論であるRISM理論に基づき、計算した。
その結果、線形応答の仮定が十分成り立たない事がわかった。また、そうした
溶媒の応答の非線形性は、溶媒和構造を分子論レベルで議論する事ではじめて
理解できる事がわかった。